ロードレース三昧な日々 | 猫のおなか

ロードレース三昧な日々

ブログにはこれまで特に書いてないけど、毎日毎日サイクルロードレースをTV観戦する日々です。
サッカーを観ない日はあっても、ロードレースを観ない日はないくらい。

特にグランツールと呼ばれる「ジロ・デ・イタリア」「ツール・ド・フランス」「ヴェルタ・エスパーニャ」が行われる初夏~秋は、まさに超オンシーズン! 目が離せないのです。

ことに、およそ3週間に及ぶレースステージをすべて生放送で観ることが出来る、ツール・ド・フランスは特別!(Jスポーツ でLIVE放送)
世界最高と言われるその規模(21日間3,610km、参加21チーム189人)はもちろんだけど、なんといってもLIVEの緊張感、そして現地でもこちらでも、同時に多数の人とその瞬間を分かち合えるからです。

その直前レースのツール・ド・スイスの再放送と、昨年のツール・ド・フランスの全ステージ再放送を、毎日朝から観ている私。

今日のツール再放送は、標高1850m平均勾配8%の山、ラルプデュエズを単独で駆け上るタイム・トライアル(TT)。通常はチームで勝ちを競うんですが、TTでは個人の能力のみで戦います。
しかも通常は平地で行われるこのTT、この日は山の頂上でゴールという特殊なもの。このレースは、昨年亡くなった、山の小悪魔と呼ばれ98年のツールを征したマルコ・パンターニを偲んでのコースレイアウトでした。


ロードレースファンには周知のことですが、現在もっともツールに強い男はランス・アームストロング。そして、宿命的!ともいえる彼のライバルは、ヤン・ウルリッヒなのです。(写真右がウルリッヒ、左がランス)

ヤン・ウルリッヒは東ドイツ時代に英才教育を受けたスポーツエリートで、ドイツ統合後もその才能をいかんなく発揮しつづけたサラブレッド。1996年のツールではアシストとしてエース(ビャルヌ・リース)を援護しつつ総合2位、翌1997年にはついに、総合優勝を果たしています。
また、この年の優勝はドイツ人初だったこともあって、一躍ドイツの英雄に!あのF1のシューマッハと肩を並べるほどの人気者になります。

この時、彼は若干23才。その才能、環境、若さから、これからは彼の時代だと、誰もが確信したのです。
その同じ時、アームストロングは癌との闘いの最中でした。所属していたチームから見放され、絶望との闘いでもあったようです。

翌1998年、その年絶好調のマルコ・パンターニがツールの前に開催されたジロ・デ・イタリアを制覇。迎えたツールでも好調を維持し、ウルリッヒと最後まで競り合い、ツールも征してダブル・ツールの覇者になります。結局ウルリッヒは2度目の総合2位に終わります。

そして1999年。ランス・アームストロングが復活の総合優勝を果たした時、ウルリッヒは膝の故障の為、ツールには不参加でした。

口さがない人々は、ウルリッヒだけでなくパンターニ、リース、ジャラベールなどの有力選手が不参加だったこの年のレースはアームストロングにはラッキーだったと、揶揄したものです。

しかしそれから毎年、アームストロングとウルリッヒのライバル対決と謳われつつ、勝利を手にするのはいつもアームストロングでした。2002年は自身の問題の為不参加でしたが、それ以外のどの年も、あと一歩でアームストロングにかなわない……そんな屈辱を味わい続けることになったのです。

気がつけば、既に5度も2位を味わっているウルリッヒ…。

ウルリッヒの不運は、アームストロングと同じ時代に絶頂期を迎えたこと、と言う人もいます。でも、やっぱりウルリッヒの走りを楽しみにせずにはいられません。彼にはどこかそんな魅力があるんです。

今日の再放送の個人TTで、そんなウルリッヒの鬼気迫る走りをまた観ました。昨年も観てるのに、何度もみてしまいます。

個人TTは総合順位の下位から順に出走し、途中に中間計測点が数カ所あります。そこを通り抜ける度にそれまでの最高タイムを次々に更新していくウルリッヒ。最高に集中していて、これ以上ない気迫の走り!沿道からは彼の走りを待っていた観客から大喝采!!次から次から、降ってくるような歓声がやみません。
そしてそのまま、それまでの最高タイムを大幅に更新してフィニッシュ!

ウルリッヒのスタートから約10分後、アームストロングの出走です。……それはまるで別次元の走りでした。
ウルリッヒが「鬼のごとく」走っていたとすれば、アームストロングの走りは「鬼神」そのものだったのです。中間計測のウルリッヒの記録は、またもアームストロングによって塗り替えられていきます。

しかし人は、弱みを見せてくれる人に共感を覚えるものです。そのあまりの強さは、反感すら買ってしまいかねません。

アームストロングの不運は、ウルリッヒのような、強さ以外の部分でいつも愛される人間と同時代に、絶頂期を迎えたことかもしれません。

アームストロングは最後の最後まで全力で走りきり、ウルリッヒに1分1秒の差をつけてこのステージを勝利しました。(そして最終的に総合優勝を手にし、前人未踏の6連覇の快挙をも手にします)

でも、その山、ラルプデュエズで最高の記録を残しているのは、今でもマルコ・パンターニです。その記録はランス・アームストロングでも塗り替えられなかったわけです。
彼は昨年2月14日、ひとりで死を迎えたのだけど、今でも沢山のクライマーの中で、燦然と輝く大きな目標です。今年は、いったいどんなクライマーがツールに挑戦するんでしょうか? それも楽しみのひとつです!

そしてアームストロング現役最後の年のツール、どうなるんでしょう。

こんなドラマが次々と生まれるロードレース、目が離せるわけがないのです!